クマにかみ殺された女性

 1989年2月、61歳の主婦が自宅から約1時間半ほどの、熊本県にある阿蘇クマ牧場十二支苑内の子グマ舎へ飛び降りて自殺した。

 ドスーンという音を聞いた飼育係が駆けつけると、柵から2.5m下の子グマ舎では、68頭のクマが黒山のように1ヵ所に群がり重なりあっていた。消火器でクマを追い払うと、白い粉のなかから人の姿が浮かんできた。死体はすでに子グマに食い荒らされており、内臓はすっかりなくなって、胃から腸にかけてポッカリと大きな穴が開き、手や足など全身の数ヵ所にクマに食いちぎられた跡があった。衣服はズタズタに引き裂かれ、裸同然で、右目は飛び出していた。

 彼女は熱心な仏教の信者で、以前から「自分は悪魔の世界に落ちる」「人間は死んでも魂は生き残る」などと語っていたという。昼過ぎに家を出るときには「私はあの世に行くように言われている」と言い残し、夫宛てに遺書も残していた。近所からは変わり者と見られていた。

 この女性は以前に「トラに食べられて死にたい」などともらしていたことから、クマ舎の隣にあるトラの檻に入ろうとしたが、鉄格子がかかっているため入れず、代わりに隣のクマ舎に飛び込んだとも噂されている。


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