服毒自殺を遺書で実況

 1962年3月6日午前7時、山梨県甲府市の男性(20)が自宅2階の勉強部屋で服毒自殺をしているのを発見された。彼は東京で大学生をしていたが神経衰弱になり帰郷しており、農薬を飲んだものだった。遺書が見つかったが、これが農薬を飲んだ後に書かれたもので、非常に珍しかった。

 「3時55分、農具部屋から持ちだすことに成功した。ただし親が戸を開ける音に気づいて目をさましたらしいが、まあいいだろう。いま時計は4時20分、早くのむことにする。カップに酒をまぜた毒物が机の上にあるが、においでもうオレの頭は少し痛む。」

 「4時25分、ついにのんだ。味は何ともなかったが、心臓の脈が激しくなった。二度目をまたカップにといたが、半分ほど残っている。これ以上のみたくない。」

 「4時30分、足に軽いケイレンが起こりだした。脈は1分間に114回、痛みは全くない。ただケイレンするだけだ。」

 「4時35分、ノドがえごいという感じがする。脈は1分間に120回、頭が重くなってきた。」

 「4時40分、酒のためか頭がほんのり赤味をおびている。」

 「4時50分、すでに20分たっているのに痛みもそんなにひどくない。脈が早いだけで腹も痛くない。」

 「4時55分、手は血の気がない。白いようになってきた。頭痛も目まいもない。痛む薬だろうと思っていたのに意外だ。」

 「5時、少しも痛くない。薬が少なすぎたのか疑問だが、しかしこれ以上のみたくない。どうせ死ぬなら早くぽんこつになってもらいたいものだ。NHKのラジオは朝の放送をはじめている。」

 「5時10分ごろであろう。目がぐらついてきたような気がする。もう気もちが悪くなってきた。なんだかむかむかする。頭がおかしくなってきた。気もちが悪い。」


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