粉ミルクのCM


 その昔、出演者を不幸に陥れる、死を招くCMがあった。その餌食となったのは、まだ幼い赤ん坊だった。


 現在、乳児用粉ミルクのCMは、1981年にWHOとユニセフによって策定された「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」によって禁止されている。それ以前は、母乳に代わる便利な選択肢として市場が開拓され、CMやサンプル配布などの宣伝活動が行われていた。

 1964年10月23日、女優・安西郷子の家の寝室で長女のユミ(9ヶ月)がベッドから落ちて意識不明となっているのを家政婦の女性が発見、すぐに救急搬送されたが病院で死去した。死因は、マットを重ねた25cmの高さのベッドから落ちて毛布と枕で窒息死したものだった。

 安西はこの長女と一緒に粉ミルクのCMに出ていたが、奇しくもこの同じ製品のCMは寿美花代が本来出演するつもりだったが、長男(高島道夫)が家政婦に殺害され、この事件の影響で、寿美は粉ミルクのCMを降板し、代わりに安西が引き継いだばかりであった。

 CMに出演したママの赤ちゃんがわずか2ヶ月の間に相次ぐ不幸が続いたため、粉ミルク会社はタレントが出演するCM自体を作成しないことを決定することとなった。単なる偶然と言ってしまえばそれまでだが、第三の犠牲者を出さない意味でも、粉ミルク会社の判断は正しかったと言えよう。


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