I WIN

【第二章 求めるヒト】
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─1992年9月─


一台の車が積載車に積まれ、運ばれてきた。
漆黒のボディに、太いマフラー。
その車の名は…『R32GT-R』。
朝早いこの時間だったが、数人の男性が積載車を迎え入れていた。
その男性達の中に一人、見覚えのある顔があった。
寝癖がついたままになっている黒い髪に、鋭く光る赤い瞳。
「やっと来たぜ。念願のR32が。」
と、青年は唇の端を持ち上げる。
「まさか、輔凛の車を買うことになるとはな。」
「お〜い、賚!降ろすの手伝ってくれ!」
そう、この青年の名は神崎賚。
かつて輔凛と一緒に峠を走っていた男だ。
「おう、今行く!」
と、軽く返事をした賚は積載車に向かう。
そして、賚を呼んだ男性が何かを投げた。
慌てて賚は投げられたモノを受け取る。
「それがコイツのキーだ。」
ニィっと 彼は笑う。
賚も同じように笑う。
「サンキュー、智輝。」
と、賚は彼の名を呼ぶ。
「やめろよ、礼なんて。お前に似合わないことすんなよ。」
智輝と呼ばれた男性は笑う。
「うるせぇ。」
賚がコツっと智輝に肘うちする。
「痛ぇ〜!骨折した〜!!」
と、智輝が肘うちされた腕を押さえる。
賚はそれを無視し、積載車から下ろされたR32GT-Rに近付く。
ドアを開け、ドライブシートに座る。
智輝に渡されたキーを差し込み、捻った。
途端、RBサウンドが早朝の静寂を破る。
―君は誰…?―
また、あの時の声が聞こえた。
しかし―
「やっぱりイイ音だぜ〜RBサウンドは!」
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